東京地方裁判所 昭和51年(特わ)1269号 判決 1976年7月19日
本店所在地
東京都港区新橋二丁目一番一号
石芝サービス株式会社
(右代表者代表取締役黒田秀雄)
本籍
同都千代田区飯田橋三丁目一八番地五
住居
同都大田区東嶺町九番二号
会社役員
黒田秀雄
明治四二年七月二日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官清水勇男、弁護人大江兵馬出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告法人石芝サービス株式会社を罰金一億三、〇〇〇万円に、被告人黒田秀雄を懲役二年に各処する。
被告人黒田秀雄に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告法人石芝サービス株式会社(以下単に被告会社という)は、東京都港区新橋二丁目一番一号に本店を置き過給機(ジーゼルエンジン出力増加装置)およびその部品等の販売並びにアフターサービス等を営業目的とすする資本金二億円の株式会社であり、被告人黒田秀雄は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人黒田秀雄は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入を計上し期末商品たな卸高を圧縮するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四七年八月二一日から同四八年八月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億七、〇四〇万五、五八九円あったのにかかわらず、同四八年一〇月二〇日、東京都港区芝五丁目八番一号所在の所轄芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六、五八二万〇、〇四二円でこれに対する法人税額が二、三〇〇万四、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右被告会社の右事業年度の正規の法人税額九、八一八万四、三〇〇円と右申告税額との差額七、五一七万九、五〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(一)(四)のとおり)
第二 昭和四八年八月二一日から同四九年八月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六億八、二一九万八、四五三円あったのにかかわらず、同四九年一〇月二一日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九、七八二万八、九二三円でこれに対する法人税額が三、〇七四万八、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右被告会社の右事業年度の正規の法人税額二億六、四三三万八、四〇〇円と右申告税額との差額二億三、三五九万〇、四〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(二)(四)のとおり)
第三 昭和四九年八月二一日から同五〇年八月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七億三、七七二万五、四二五円あったのにかかわらず、同五〇年一〇月二〇日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億二、一四六万六、四六三円でこれに対する法人税額が四、三八八万〇、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右被告会社の右事業年度の正規の法人税額二億九、〇三五万七、四〇〇円と右申告税額との差額二億四、六四七万七、〇〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(三)(四)のとおり)
たものである。
(証拠の標目)
(判示全般の事実につき)
一、登記官作成の登記簿騰本
一、被告人の収税官史に対する昭和五〇年一一月一四日付、昭和五一年三月四日付各質問てん末書および検察官に対する昭和五一年五月二七日付供述調書
一、小川秀子の検察官に対する供述調書
一、新妻利夫の検察官に対する昭和五一年五月二七日付供述調書
一、小川秀子作成の「簿外の入出金について」と題する申述書
一、押収してある法人税確定申告書三袋(当庁昭和五一年押第一、四二九号の七ないし九)
(各勘定科目につき)
一、大蔵事務官作成の除外たな卸額調査書および小川秀子の収税官吏に対する昭和五一年二月二六日付質問てん末書(別紙(一)ないし(三)の各番号<2>期首商品棚卸高、別紙(一)の番号<12>期末商品棚卸高、別紙(二)(三)の各番号<11>期末商品棚卸高につき)
一、大蔵事務官作成の架空仕入調査書、新妻利夫作成の昭和五一年二月一七日付確認書と題する書面および小川秀子の収税官吏に対する昭和五〇年一一月一四日付質問てん末書(別紙(一)ないし(三)の各番号<3>仕入高につき)
一、大蔵事務官作成の福利厚生費調査書、雑収入調査書および昭和五一年二月付申告書(被告人及び小川秀子作成)、昭和五一年一月二〇日付申述書(被告人作成)(別紙(一)の番号<16>福利厚圧費、同番号<33>雑収入、別紙(二)の番号<15>福利厚生費、同番号<31>雑収入につき)
一、大蔵事務官作成の交際費接待費調査書(別紙(一)(三)の各番号<20>交際接待費、別紙(二)の番号<19>交際接待費につき)
一、大蔵事務官作成の受取利息および過払源泉税調査書(別紙(一)の番号<34>受取利息、別紙(二)の番号<32>受取利息、別紙(三)の番号<33>受取利息につき)
一、芝税務署長作成の証明書(別紙(一)の番号<54>価格変動準備金繰入額、別紙(二)の番号<45>価格変動準備金戻入益、同番号<51>価格変動準備金繰入額、別紙(三)の番号<44>価格変動準備金戻入益、同番号<51>価格変動準備金繰入額につき)
一、大蔵事務官作成の「交際費の損金不算入額の計算について」と題する調査書(別紙(一)の番号<59>交際費限度超過額、別紙(二)の番号<56>交際費限度超過額、別紙(三)の番号<57>交際費限度超過額につき)
一、大蔵事務官作成の事業税額調査書(別紙(一)の番号<61>事業税認定損、別紙(二)の番号<58>事業税認定損、別紙(三)の番号<66>事業税認定損につき)
一、大蔵事務官作成の電話加入権調査書および昭和五一年二月付申述書(被告人および新妻利夫作成)(別紙(一)の番号<25>租税公課、同番号<45>有価証券、別紙(二)の番号<24>租税公課、同番号<43>有価証券売却損、別紙(三)の番号<46>過年度経費修正益につき)
一、大蔵事務官作成の昭和五一年二月二七日付証明書(別紙(二)の番号<1>売上高、同番号<4>外注費、同番号<12>報酬給与賞与につき)
一、大蔵事務官作成の法人税額計算書(記録一六号と表示されているもの)(別紙(二)の番号<33>受取配当金につき)
一、大蔵事務官作成の雑費調査書(別紙(三)の番号<31>雑費につき)
一、大蔵事務官作成の有価証券期末残高および売却益調査書(別紙(三)の番号<59>有価証券売却益につき)
一、新妻利夫の検察官に対する昭和五一年五月二八日付供述調書(別紙(三)の番号<34>受取配当金につき)
一、大蔵事務官作成の法人税額計算書(記録一七号と表示されているもの)(別紙(三)の番号<58>控除所得税につき)
(法令の適用)
一、該当罰条と刑種の選択
被告会社の判示第一ないし第三の各所為 各法人税法一六四条一項、一五九条
被告人の判示第一ないし第三の各所為 各法人税法一五九条(いずれも懲役刑選択)
一、併合罪加重 刑法四五条前段
被告会社 刑法四八条二項
被告人 刑法四七条本文、一〇条(最も犯情の重い判示第三の罪の刑に加重)
一、執行猶予 被告人につき刑法二五条一項
(量刑の事情)
被告人は被告会社の創立者でありかつ資本金について石川島播磨重工業株式会社(以下単に石播重工という)と折半する形で出資しているものであるが、被告会社の営業のほとんどが右石播重工の生産する過給機の販売であるため大巾な利益が公表された場合には、右石播重工より仕入単価の引き上げを要求されるおそれのあること、二部上場のため増資に際して乗取りを防ぐための自已資金の蓄積、簿外交際費の捻出等を動機として、主として架空仕入の計上、期末棚卸の圧縮等の方法により本件ほ脱を行なつたものである。そのほ脱税額は三期合計で五億五、五〇〇万円余の巨額にのぼり申告率はわずか一七%余であって、手段は単純とはいえ、ほ脱を企画した動機には他の中小企業に比しややぜいたくとも評される面もあって、納税倫理の向上が叫ばれている昨今においては極めて悪質な事案と評価されなければならない。本件摘発後被告人は十分反省して国税局の調査に積極的に協力し、ほ脱額については修正申告により本税、加算税、事業税を含め九億円余りを納付していること、簿外とされた金員を個人的に費消した形跡のないことなど被告人に有利な諸般の事情を考慮しても主文程度の量刑はやむをえないものと思料する次第である。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 安原浩)
別紙(一)の(1)
修正損益計算書
石芝サービス株式会社
自 昭和47年8月21日
至 昭和48年8月20日
<省略>
<省略>
別紙(一)の(2)
石芝サービス株式会社
自 昭和47年8月21日
至 昭和48年8月20日
<省略>
別紙(二)の(1)
修正損益計算書
石芝サービス株式会社
自 昭和48年8月20日
至 昭和49年8月20日
<省略>
<省略>
別紙(二)の(2)
修正損益計算書
石芝サービス株式会社
自 昭和48年8月21日
至 昭和49年8月20日
<省略>
別紙(三)の(1)
修正損益計算書
自 昭和49年8月21日
至 昭和50年8月20日
<省略>
<省略>
別紙(三)の(2)
修正損益計算書
石芝サービス株式会社
自 昭和49年8月21日
至 昭和50年8月20日
<省略>
法人税額計算書
<省略>
<省略>
別紙(四)の(1)
法人税額計算書
<省略>
<省略>
別紙(四)の(2)
法人税額計算書
<省略>
<省略>